東京高等裁判所 昭和55年(ネ)2276号 判決
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【判旨】
控訴人主張の日時、場所(所沢街道)において、いずれも所沢方面に向け進行中であつた被控訴会社代表取締役木村三七男運転の普通乗用自動車多摩五六ね一二七四(以下木村車という。)が控訴人運転の軽貨物自動車六六多摩あ五五六(以下控訴人車という。)に接触する事故が発生したことは、<証拠>(いずれも司法警察員作成の実況見分調書)によつて認めることができる。
控訴人は、右事故は、控訴人が横断歩行者を発見したので横断歩道手前で一時停止したところへ、スピードを出し過ぎて走行してきた木村が、前方左右に対する安全確認義務を怠り、急ブレーキをかけたが及ばず、控訴人車に追突したものであると主張する。そして原審及び当審における控訴人本人尋問の結果はこれにそうものである。
しかしながら、控訴人は、木村車がはじめ控訴人車の右後タイヤの上あたりに接触し、控訴人車に擦過痕及び凹損を与えたと供述するが、<証拠>によれば、控訴人車は右前部フェンダー、木村車は左前部フェンダーが破損したとされているのみで、事故直後の実況見分では右供述のような控訴人車の損傷が発見されていないことが認められ、また、控訴人は、横断歩道の信号が赤であつたのに歩行者が横断していたと供述するが、歩行者を発見したときの歩行者の位置についての供述が必ずしも明確ではなく、夜間控訴人車や木村車が走行してくるのは前照燈で当然歩行者に分つたはずであり、しかも信号が赤であるのに横断するということはやや不自然なことというほかなく、控訴人の供述には全体としてにわかに信用しがたいものがある。
また、控訴人が当審で提出した<証拠>(全国交通事故防止協会連合会会長石川彰謙作成名義の鑑定書と題する書面)は、木村車は停車中の控訴人車を約二一メートル手前で発見して急制動を開始したが間に合わず、控訴人車の右側後部を擦過接触し、木村車の左側前部フェンダーを控訴人車の右側前部フェンダーに衝突させたものと推定でき、木村三七男の指示説明は事実として認めがたいと結論づけているが、その説明内容を見ると、接触前の両車の相対的位置が不明確であること(両車のそれぞれの走行経過時間、速度だけから相対的位置を決定することはできない)、木村車の衝突速度(制動前の速度ではない)をスリップ痕の長さから算出していること、木村車の重量を一〇二キログラムという明らかに誤まつた重量で計算していること等々の根本的な欠陥があり、到底採用しうるものではない。
そのほか全証拠を検討しても、本件事故が控訴人主張のような木村三七男の過失によつて生じたものであることを認めるに足りる証拠はなく、結局控訴人の本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく、失当というほかない。
よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(小林信次 浦野雄幸 河本誠之)